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【ぼくの県展回顧録】 第28回 昭和49年(1974)高知県展              NO.4

躍り出た新鋭 フォトクラブ誕生で得たもの

 誕生して満一歳にもならない我がフォトクラブから、10点もの入選作が出て、県展プログラムを飾った。しかもその中の一人は褒状に輝き、クラブとしては幸先の良いスタートになった。順次紹介して行く。 褒状入賞は浜田圭志『盛夏昼下がり』。戸板島橋の南にある祠の大木を、車両の屋根に陽炎のように写し込んだ嘘と実の錯綜、シュールな世界を2枚の組写真で表現した。これは、ぼくのとても真似できない特殊な世界であった。更に入選で『番犬』があったが、『盛夏・・』の存在が大きくてどんな絵柄であったかすっかり忘れてしまった。
 この年より組写真が解禁となり表現方法を考えさせられた。結果、素材は単なる行事ものでなく、説明的な表現をせず、心象、内的な見せ場を作り上げようとしたことが、見事褒状に結び付いた。そんな方法論が、逆にぼくの特選への道を遠くしたようでもある。
 同じ「かがみの育成園」務めの故保木林さんは『雨の日に』。電車通りで、雨滴の付いたフロントガラスを通して撮った横断する物憂いような人間模様だったと思う。
 三木孝重『国際線ロビー』。階段を上がり詰めたところで振り返ると、そこには見送る人かげはなく、掃除夫がいて行き交う人も2、3人という纏まりの良い構図で、ぼくの好みの佳作であった。
 田所忠仁『フラフ職人』フラフが画面の上部半分を占めて、仕事中の様子が分かる職人(女性)の足元には画材が散乱している。フラフの中の絵と職人の上半身がシルエットで浮かび上がっていた。
 上森陽『街のシーン』。東京、雑踏、騒音、止まるはずのない時をいたずらにストップモーションで捉えてみると、人は画面にかぶさるように足を止め、そこには不安定な傾きをもった残像が…。西岡さんのすすめで入った高知現美集団
 故田原武男さん『傘』。場所は和食、背景に浜沿いの松林を高く取り入れ、白い傘の女性の後ろ姿をそっと優しく撮ったものだ。ぼくもいっしょに出掛けた時の収穫だった。
 小松国盛『遍路』。泥にまみれた脚絆や草鞋履きの二三人の下肢。大胆なカッチングがとても新鮮だった。お遍路の集団、歩いて来た道程、これから先への力強い決意そんなものまで見えてくる、お遍路をこんなふうに扱った作品はその後においても類を見ない秀作だった。
 小川俊夫『初夏』。一本の田舎道を日傘をさした女性が向こうの方へ歩いて行くフルサイズの作品だったように思う。

どん底の入選作は『暗い歩み』

 バラ色ばかりが人生じゃないことを、思い知らされる結果が出てしまった。県展は意外に易しいもんだ、でクリヤーしてきた3回の過去がウソのように、今回はただの一点しか入選していない。こんなはずではないと胸にもやもやが渦巻く。その代わりにと言える新しい仲間たちが、ぼくを支えるように入選を果たしてくれた。みんなが初出品初入選の頼もしい新星だ。これからぼくの力になってくれるだろう、と思えば良い。この時点からぼくは自分のことだけを考えるというわけにはいかなくなった。だれもがぼくと同じように努力してきて、この一年の成果を審査してもらおうと必死なのだ。
 この年の2月、クラブあげて土佐山田分会として日本報道写真連盟に入会した。

南国・香南・岩崎フォトグラフの合同例会ぼくは既に、高知写壇(高知支部)に籍を置いて武者修行の身となっていた。写真の勉強はもちろんのこと、組織作りについても先輩たちに学ぶこととした。その中から得たものの一つに、心を繋ぐ会報の発行がある。
 高知支部の20名を越す大所帯の中で認められ、更に関西本部でベスト5に選ばれるような作品を撮りたいとぼくは願った。
 また、他流試合も試み、大野氏の指導している香南、南国のクラブとの合同例会に参加させてもらった。作品は未熟であったが、意欲だけは他には劣らないものがあった。


 さて一点入選の『暗い歩み』のことだが、耳をたれた猟犬(子犬だが)が橋の真ん中をこちらにやってくる、ただそれだけ。と言えば、それだけのことかもしれないが、プリント仕上げにどれだけの時間がかかったことか。町内の平山で橋に腹ばって向こうからとぼとぼやってくる姿を、ラストの一コマだけ撮ってあったものだ。しかも28ミリ、ぼくの最も使い辛い苦手のレンズによるものだった。
 仕上げには、自分の姿を見つめ焼き付けるような思いで、じっくり露光をかけて、白っぽいところまでも焼き込んだ。結果は真昼の空を夜空と見まがうばかりに焼き落とすことになってしまった。自分を表現、作品の中に入れ込む初めての試みだった。
 審査は昨年につづく渡辺勉氏。
 ぼくの注目した特選作品は、島内吉康さんの『雨期』4枚組。山の坂道100M先の工事現場の標識・そよぐ草原・坂道の下に見える小暗い瓦屋根の家・3本戦の入ったバス、いずれも雨に濡れたレンズを通して眺めたものたち。「自分の生活、生きざまとカメラで芸術にかかわっていく行為とが一体となった」評。
 この人が無鑑査として今なおご存命ならば、いつも良い刺激をぼくは与えられていたことだろうと思ったりする。高知の写真界では惜しまれる人であった。